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 フランス南東部のドローム県に建つ『シュヴァルの理想宮』は、郵便配達人のフェルディナン・シュヴァルが、33年かけてたった一人で作り上げた宮殿です。
 1879年、フランス南部の片田舎であるドローム県オートリーブにおいて郵便配達夫であるフェルディナン・シュヴァルは、ソロバン玉が重なったような奇妙な形をした石につまずきました。その石から何らかのインスピレーションを得たシュヴァルは、以降、配達の途上石に目をつけ、仕事が終わると石を拾いにいき、自宅の庭先に積み上げるという行為を続けるようになります。
 彼はそれまでに建築や石工の仕事の経験はありませんでしたが、ひとり手押し車で石を拾い集め、積み上げ、成形して、東西26メートル、北14メートル、南12メートル、高さ8~10メートルの構造を作り上げました。
 村人は、奇行に驚き呆れましたが、宮殿は1912年に無事完成しました。1930年頃にはピカソや詩人ブルトンら一流芸術家も絶賛する「作品」と見なされるようになり、1969年には国が歴史的建造物に認定しました。
 宮殿の外装には多種多様な動植物や神話的人物などがひしめき、側面にはモスクや中世の城、スイスの山荘、エジプトの神殿、アンコールワットが彫り込まれています。これは田舎町の郵便配達員だったシュヴァルが、絵葉書や新聞の写真を見て思いをはせ理想郷を形作っていったことがうかがえます。 
 建設の経緯は2018年に『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』として映画化されています。