■ 憶病者の一人旅

　どうせ反対されるだろうと思い、両親にはチケットを買ってから報告した。今回の旅では、マレーシア・シンガポール・ベトナムを約１ヶ月かけて周遊する予定だ。強い不安とかすかな希望を胸に、クアラルンプールに着いたのは既に夜だった。市内でバスを降り、下調べを全くしないで来た事に、少し後悔をしながら宿を探したが、なかなか見つからない。不安は徐々に恐怖に変わっていった。

■ 初めての旅友

　やっとの事で高そうなホテルを見つけ、明日の朝一番で帰国しようと決意してベッドに入った。翌朝、ネットカフェを探しに市内をふらつくと、街の様子がわかって来た。旧市街の安宿を見つけ、なんとなく入ってみると、日本人のおじさんが歯を磨いていた。「日本人？」「はい」という短い会話の中で、言い表せない程の安堵感が生まれた。初めて旅友ができた瞬間だった。

■ マラッカの夕日

　僕にとって『神』のような存在のおじさんは、市内を案内してくれただけでなく、マレーシアのことをいろいろ教えてくれた。翌日、僕は『世界一大きい夕日』を見る為にマラッカに向かった。大型の長距離バスに僕と２人の女性のみという状況に、なんか『やばい』気がしてならなかった。何ごともなくマラッカに到着すると、ものすごい数の客引きに囲まれた。なんとか客引きから逃れ、寂れた感じのユースホステルに宿を決め、市内を散策。夕日スポットとして知られるセント・ポール教会からの夕日は、幻想的な自然美を誇り、沈むまでの間、我を忘れて見入ってしまった。この数日で人間的な成長を実感した僕は、シンガポールに足を進めた。もう、後戻りはできない！