■ 六根清浄
富士宮、舞々木橋の東のたもとを北上するとすぐに苔むした石仏群がひっそりとたたずんでいます。確かな年代等はわかりませんが、作られてからずいぶん長い歴史をもつことは、その風貌からも明らかです。今では地元民ですらほとんど関心のないこの石仏群は、俗に『サイの河原の六地蔵』と呼ばれ、六根清浄を願う富士登山者の信仰の対象となっていました。ことさら不浄を嫌い、不浄な者が富士山に登ると必ず罰を受けると考えられていた当時、この六地蔵は、六根を清浄してくれる菩薩として、富士登山者の心のよりどころだったのです。
■ 六地蔵
一般に子供の守り神として知られるお地蔵さんですが、地蔵菩薩像を六体並べて祀った『六地蔵』は、六道のそれぞれを六種の地蔵菩薩が救うという仏教の六道輪廻の思想に基づいており、全国各地で見受けられます。
■ サイの河原
サイの河原とは、いわゆる『三途の川』の河原を指します。富士登山者にとって、ここはさしずめ『地獄の一丁目』と考えられていたのかもしれません。六地蔵の傍らには、石を積み重ねて作られた石碑群が、無言の時を語っていました。