■ 楽しい気疲れ

　シンガポールで知り合った初めての旅友と、マレーシアのクアンタンヘ向かった。『旅先で知り合った友人と一緒に旅をする』という、思っても見なかった出来事が楽しくて仕方なかった。無理をしていた訳ではないが、お互いが妙にハイテンションのままクアンタンを徘徊した。３日目、彼はクアラルンプールに向かうこととなり、僕はコタバルへ向かった。楽しい３日間だったが、お互いの気疲れも、ピークに達していた。

■ 気楽？孤独？

　再び身軽になり、一人旅の気楽さを実感していたが、人間というものは不思議な生き物で、コタバルに着く頃には、すっかり心細くなっていた。孤独を感じながら町を散策していると、２人組みの日本人女性と出会った。彼女達は、タイから下って来たそうだ。旅人同士の情報交換の楽しさを再確認した瞬間、嬉しさが込み上げてきた。

■ 裸のランナー成り損ない

　シャワー共同のコタバルの宿は、管理人もいないアパートのような所だ。気持ちよく入浴し終わった後に部屋に戻ったが、ドアが開かない。つまり、オートロックだったため、タオル１枚、パンツ一丁のまま放り出されてしまったのだ。鍵を管理している案内所までは、約１㎞もあり、とても裸で取りに行ける距離ではない。外に出る事もできず途方に暮れていると、隣の部屋に滞在しているカップルが帰って来た。訳を話すと、宿の案内所に電話をしてくれただけでなく、合鍵を貰ってきてくれた。あの時のカップルがいなければ最終的には、コタバルの町なかを、毛深い裸の日本人が駆け抜けるという、ニュースにもならない珍事件が発生していたに違いない…