■ おびん水
白糸の滝のすぐ上に岩窟があります。そこには、源頼朝が富士の巻狩りのおりに立ち寄り、鏡のような水面で鬢(びん)のほつれを直したと伝えられている『お鬢水(鬢なで水)』という泉が湧いています。懇々と湧き出る泉の水量は結構なものですが、水面は波紋一つなく、言い伝えの通り鏡のようです。お鬢水は富士講の霊場の一つでもあり、石碑だけでなく、岩窟を取り囲む岩自体にも多くの文字が刻み込まれています。名瀑である白糸の滝を眼下に見下ろす絶景地でありながら、ここを訪れる人はほとんどなく、神秘的な雰囲気に満ちています。
■ 富士の巻狩り
一一九三年、源頼朝が上洛と帰還の際に現在の朝霧高原付近を中心として、壮大な巻狩りがおこなわれました。主な目的として、軍事訓練が挙げられ、巻狩によって武士たちの訓練をしたといわれています。また、武士たちの慰安の目的もあったとされ、祭りのような行事であったとも言われています。
■ 富士講
富士講は、富士山とそこに住まう神への信仰を行う富士信仰の一派です。戦国時代から江戸時代初期に人穴で修行した藤原角行によって創唱されました。