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「たねから見える私たちの未来」 No5 242


2023-05

 第4話では100年インゲンのお話をしました。たねにはストーリーがあります。

 シードバンクの活動で不思議なたねに出会いました。それは2018年沼津で開催された第一回静岡オーガニックフェスティバルでの出来事でした。シードバンクのブースで開催した「たねの交換会」に、ある家族が訪れました。たねを持って来てくれたのですが、どうも様子が違います。「このたねを何としても繋いでほしい。」大切に手にしていたのは、何とも美しい数粒のたね。そのたねは、北海道に住むおばあちゃんが大切に繋いできた、かぼちゃといんげん豆のたねで、遠く沼津に住む家族の元へそのたねが送られてきたとのことでした。
いつもは、収穫したかぼちゃを送って来てくれるのに、何故かたねを送ってきた。不思議に思っていたその3日後、北海道胆振東部地震が。

(2018年9月6日最大震度7)
おばあちゃんは、地震による山崩れに埋もれて帰らぬ人になってしまいました。遠い北海道のおばあちゃん
から、愛する家族に引き継がれた命のたね。おばあちゃんは、地震が来ることを察してたねを送ったのでしょうか?それともたねが地震を察しておばあちゃんにたねを送るように動かしたのでしょうか?「交換ではなく、富士宮の有機農家で何としても繋いでいただきたい。」この家族のおばあちゃんへの愛と共にそのたねを受けとりました。2軒の同志の有機農家でたねを繋いでもらえることになりました。残念ながら、いんげん豆は北海道の気候との差でたねを繋げることはできませんでしたが、かぼちゃは元気に育ってくれました。 そして2019年8月に家族の方に来て頂き、一緒に収穫することができました。おばあちゃんの遺影も一緒でした。おばあちゃんは帰らぬ人になってしまいましたが、たねは未来へ繋がれました。

 有機農家がおばあちゃんの名前から「きぬえかぼちゃ」と命名して、今も繋がれています。

 たねと人が織りなすストーリーがこのような不思議な形で展開することもあるのですね。