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「たねから見える私たちの未来」 No8 245


2023-08

 第4話から第7話まで在来作物についてお伝えしてきました。
 
 昔からその地域で世代を越えて繋がれてきた作物を在来作物と言いますが、それらは様々な要因で消滅し続け、今ではもう見る事も食べる事も出来ないものが増えています。一度失われたたねは二度と復元することはできないのです。

 昔は地域ごとに地域の作物とたねがあり、地域性・多様性豊かな食文化が存在していました。今ではどこのスーパーに行ってもほぼ同じ種類の野菜しか売っていませんよね。それだけ私たちの食は多様性を失っていると言えるのです。

 例えば、最近の小松菜は、茎が太くてしっかりしていて、サイズも大きいと思いませんか?昔の小松菜は、茎が細くて小ぶりで葉が丸っこい形をしています。シードおじさんも昔ながらの小松菜を栽培していましたが、茎が細くて折れやすく、とても丁寧に扱う必要がありました。加熱するとすごく少量になってしまうのですが、とても美味いんです!やや黄緑がかった美しい緑と柔らかさを持つそれは、奥行きと深みのある、
身体に染み込む味がします。

 今スーパーで販売されている小松菜は交配種(F1種)で、炒め物にしても目減りせず、シャキシャキとしっかりした食感です。味は味付け次第で柔軟性があり、個性はありません。これは、中国野菜のチンゲンサイと交配させて作り出された小松菜です。ですから茎が太くしっかりしているのです。なぜか?都合が良いからです。昔ながらの小松菜だと茎葉が細く柔らかいので、収穫・出荷や運搬時にポキポキと折れてしまいロスが多くなります。交配種の小松菜はちょっとしたことでは折れないのです。日持ちもします。

 現代の流通や調理する側の要望にも応えるように、たね屋さんが改良したたねなのです。フードシステムのニーズに合うように改良を重ねるのが、たね企業の仕事でもあります。そのおかげで、今私たちはいつでも何処でも同じような食べ物を同じように食べることができるのです。感謝ですね。

 しかし、ちょっと待ってください。果たしてそれが本当の意味で豊かだと言えるのでしょうか?疑問を持つことは大切です。続きは次回。