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灰色の街『ブカレスト(ルーマニア)』【2016年2月号No.155】

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■ 恐怖のジプシー

 ベオグラードから、ルーマニアの首都ブカレストに行く事にした。夜行列車のチケットを買い、駅のホームに立っていると、何人もの人が、声をかけてきて「ジプシーに気をつけろ」としきりに言ってくるので、さすがの僕も、だんだん怖くなってきた。ジプシーとは、ヨーロッパの盗難トラブルの話題で必ずと言っていい程登場する、主に北インドのロマニ系に由来し、東欧に居住する移動型民族で『ロマ』とも言う。ちなみに、僕のような旅人は大抵の場合、全財産を現金で持って旅をしている。

■ ブカレスト

 ビクビクしながら電車に乗り込んだが、結局ジプシーは現れず、翌朝ブカレストに到着した。警戒体制で一睡もできなかったので、何か損をしたような気分になった。しかし、ジプシーに身ぐるみ剥がされることを考えれば、眠れなかったことぐらいは大した問題ではない。駅前の食堂で朝食を食べ、荷物を駅に預けて街に出た。

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■ 国民の館

 街の中心にそびえる『国民の館』は、非現実なほど巨大な宮殿だ。その大きさは、世界の宮殿や政府機関の中でも、ペンタゴンに次いで世界で二番目。凄まじく大きな建物だが、東欧の建物だけあって、西欧に比べて奥深さが足りない。

■ 灰色の街

ブカレストは、野良犬がとても多く「噛まれるのではないか」と心配になってしまう。とても暗い雰囲気が漂い、観光と言っても国民の館と凱旋門以外、これといった見どころはない。オリンピックの体操選手のように美人が多いが、僕の描いていた『ルーマニア』像とは掛け離れていた。

■ ブルガリアへ

 時間をもてあましてしまい、宿泊予定を返上し、その日の夜行列車でブルガリアの首都『ソフィア』に向かうことにした。ソフィアでは、旅の途中で知り合った仲間達と合流の約束をしていた。胸一杯の期待を抱いて電車に乗り込んだ。もちろん、ジプシーにはビクビクしていたけれど…

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