■ 西の果て

　アイルランド第二の都市であるコークに到着、ゴールウェイを経由し、ヨーロッパの西の果て『アラン諸島（イニシュモア島）』に向かった。ちなみに、アランとは、アイルランド語で長い山々を意味するらしい。

■ Ｂ＆Ｂ

　アラン諸島は三つの島から成り、僕は最大の島であるイニシュモア島に向かった。イニシュモア島での宿泊は、Ｂ＆Ｂ（ベッド＆ブレックファースト）と呼ばれる宿泊施設。Ｂ＆Ｂは、簡単に言うと『朝食付きの低料金制の民宿』だ。ホテルとは違った、アットホームな雰囲気が心地いい。

■ 馬車

　島を貫く一本道では、二時間に一本程度のバスもあるが、手をあげると止まってくれる馬車が便利だ。のどかで美しい景色を眺めながら馬の蹄の足音が「ポッコポッコ」と単調なリズムを刻む。車を見かけることもほとんどなく、時折見かけるのは、自転車に乗った観光客くらいだ。眠くなる程ゆっくりとした時の中をポコポコ行くのも悪くない。

■ アランセーター

　アランセーターと呼ばれるアラン諸島発祥のフィッシャーマンズセーターが有名で、縄状の独特の編み込みと、ハニカムなどの模様が特徴的だ。セーターには全く興味がない僕だが、ついつい買ってしまった。

■ ダン・エンガス

　山のふもとで馬車を降り、ぬかるむ山道を登ると、山頂では観光客が岩の上に寝転がっている。切りたった断崖絶壁の上から、海面を見下ろしているのだ。ラピュタを思い浮かべる絶景に近づいてみると、彼らがなぜ腹ばいになっているのかが理解できた。約百メートルの断崖絶壁の前では、足がすくんでとても立ってはいられない。
　背後には、ケルト人が築いたといわれる環状の石の砦『ダン・エンガス』が広がっている。この砦は、紀元前八百年頃に建設されたとみられているが、いったい何のために築かれたのかなど、詳しくは全くわかっていない。謎に包まれた石の砦を前に、古代ケルト人に思いを馳せていると、当時の生活が見えた気がした。